コーチングに必要なスキル

  • コーチングのスキルは,注意を向けることに尽きる。(ジョセフ・オコナー&アンドレア・ラゲス『NLPでコーチング』)
  • 注意を向けるだけで,心はつながる。それが欠けていては,共感は生まれようがない。(ダニエル・ゴールマン『SQ 生きかたの知能指数』)

上記にあるようコーチングにおいて最も大切なスキルは、クライアントに共感する事です。その他、聞くスキル、俯瞰のスキル、比喩のスキル、認知のスキル、質問のスキル、フィードバックスキル、提案する、リクエストする、承認のスキル、視点を変えるなど様々ありますので、順を追って説明します。

共感するスキル

コーチングの最も基本的なスキルは、まずクライアントに共感することです。それが,他のすべてのスキルの基本です。では共感とは何か。

  • 共感とは,他者の感覚,感情,思考,衝動に入り込み,それを体験する能力です。
  • 他者の感覚,感情,思考,衝動を的確に見出し,それに基づくことで,他者に共感することが可能になります。その点で,他者を見出すことは,他者の感覚,感情,思考,衝動を的確に見出すことを意味する。
  • 共感的つながりをどの程度形成しているかを調べるには,自らの反応を手がかりにします。

他者の世界に共感することを通して、他者の世界の訪問者となります。そして,共感的訪問者になることによって人は,その他者に特有な時間と空間の世界を発見することになります。

聞くスキル

人は,話を聞いてもらうだけで,とても安心する。話しを聞くことだけで,あなたがそこにいることを認める,というアクノリッジメント(承認)になる。ただ話をじっくり聞かれることで,あなたは話していていんだ,ここにいていいんだ,という承認を与えることができる。

安心感がある会話では,話し手は、自分の考えに集中することができ,いろいろな気づきが生まれ,その場のコミュニケーションをより発展させることができる。

安心感は、自発的な行動を生み出していく源となる。
ゆえに、安全安心の場が出来るように、梅田は下記の様な姿勢で聞きます。

  1. いつでも耳を傾ける
  2. 相手のコミュニケーションに注意を向ける
  3. 相手が見るのと同じように見る
  4. 評価を一時棚上げにする
  5. 相手の考え(感情)が表現されるまでまつ
  6. 対話を求めようとする姿勢(修正や改善をおそれない)
  7. 的を射た問い,質問を織り交ぜる

俯瞰のスキル

自分自身を上空,ビルの上,ヘリコプターの上,雲の上,虹の上等々から,自分を見ることである。高さを決めるのはクライアントだが,「高い所から見たら,何が見えますか」と言った全体を俯瞰してみるための質問をします。
「問題は、その所在がわかれば8割解決したようなもの」という言葉があるように、全体を見る視点を持ち、全体最適化できるアプローチをします。

比喩のスキル

喩えは,結構強力である。状態を説明したり,気づかせたりするとき,直接「迷う」というより,「霧の中」の方が,心や感情にビジュアルにあるいはイメージ豊かに受け止めてもらいやすい。
よりリアルなイメージをもってもらえるように、意図的に喩えの表現をします。

認知のスキル

その人の可能性や大きさを,自己認知以上に認め出すことである。掘り当てる,あるいは映し出すものといってもいい。経時的にクライアントの中にある成長しつつある部分,強い部分に光を当りをてて勇気付けるというのもあるし,本人が見ていないリソースにひかりをあたえることもある。

質問のスキル

質問は,暗い場所を照らすサーチライトのようなものです。適切な質問は新しい領域を照らし出すのです。コーチがクライアントにパワフルな質問をするとき,コーチは,クライアントに自分の体験やリソースを別の方法でふるいにかけ,それまで思いつかなかった答えを見つける機会を与えるのです。クライアントは通常自分になじみのある場所に答えを見つけようとしますが,答えはそこにはないのです。もしそこにあるなら,クライアントは既に答えを見つけているでしょう。

フィードバックスキル

フィードバックという言葉は軍事用語としても使われており,「砲弾の着眼点が目標からどのくらいずれているかを射手に伝える」という意味です。

コーチングにおいては、コーチがクライアントに,その人がどんな影響をあたえているのか,また,相手にどう思われているのか,ありのままを伝えることです。

私たちが,自分の感覚だけで把握できることには限界がある。外からの視点が必要。目標達成にむけて最適な方法を選択しているか,目標まであとどのくらいなのか,どのくらいずれているのか,客観的な視点を加えることで,ゴールへの軌道を修正していくために,フィードバックは必要なものなのである。

フィードバックは,忠告や批判,評価とは違う。相手から伝わってくること,聞こえていること,触れている感触なども含め,客観的事実をそのまま伝える。あるいはまた,見て,聞いて,そして自分自身が内側で感じている主観的事実について,ありのままを伝える。

提案する

提案とは,相手に新しい視点を提供することです。提案されると,相手はそれをやるかやらないかにかかわらず,まだまだやれることに気づかされます。それが,提案のもつ力であり,上司に求められるスキルでもある。ただ,大事なことは,それを受けるか受けないかは,相手が決める,ということだ。

提案は,指示命令とは違う。これをやらせるというのが目的ではなく,違う視点を与えること。例えば,部下が仕事がうまく運ばず行き詰まっているとする。これに対し上司がする提案は,自分の経験がもしかしたらこの場面に参考になるかもしれないと,情報を提供すること。「私も過去に同じような体験があります。参考になればと思うので,話をしたいが」。また,タイムマネジメントをあまり効率的でない方法で実行しようとしている部下に気づいたら,「こういうやりかたもあるんだけど,やってみるのはどう?」。これも,提案です。

つまり,提案は,あくまでも相手に選択権がゆだねられます。

承認のスキル

コーチングでは,相手をほめたり承認したりすることをアクノレッジメントといいます。アクノレッジメントは,それをどういうスタンスに立って相手に伝えるかによって,大きく2つの種類に分かれます。第一は「YOU」のスタンスで相手を承認するもの。「よくやった!」「やればできるじゃないか」「優秀だね」,つまり「あなたはこうだ」と相手に伝えることです。もちろん,こういった承認を受ければ決して嫌な気はしません。しかし一方でこのタイプの承認には,それ自体が評価ととらえられてしまう可能性がある。
第2のタイプは,相手が自分に対してどういう影響を与えたのかを言葉にするもの。つまり,「YOU」ではなく「I」の立場。「きみががんばっているのをみていると僕もやる気が高まるよ」「今日のきみのプレゼンは安心して見ていられたよ」このタイプの承認は相手の中にストンと落ちる。こちらはそう思っているのですから,それは否定のしようがない。いわれると,とても嬉しいもの。「信頼してるよ」「任せたよ」などもこのタイプです。

視点を変える

・アソシエーションとディソシエーション

何かと結びついた状態をアソシエーション,分離した状態をディソシエーションと言う。

たとえば,何か困難にぶつかったとき,自分の成功体験を思い出し,それをリアルに思い出すことができれば,その困難に向かって行動を起こし,それを乗り越える勇気を手に入れることができる。これがアソシエーション。 あるいは,何か問題にぶつかって,そのことを考えていても解決策が見あたらず,八方塞りな気もちになることがある。そんなときは,その問題をちょっと離れたところからみることができれば,気もちに余裕が生まれ,新しい解決策を思いつくかもしれない。これをディソシエーションという。

これを,相手のおかれた状況にあわせ,コーチングにうまく取り入れて使うことができる。アソシエーション,ディソシエーションを使うことで,行動を起こすためのエネルギーを与えたり,新たな視点をもちこんだりすることが可能にな。

アソシエーションの方法

自分にとって,なにもかも忘れて楽しい,うれしいと感じられるとき,はどんな時だろうか。また,体や感情はどのような状態にあるだろうか。ある行動を起こしているときに,心と身体が一体になり夢中になっている状態になることがある。アソシエーションとはそういった状態のことをいう。アソシエーションしていると,思い描いているビジョンの中で自分が主体となっているので,行動に直接結びつきやすくなる。そして,目標設定にこのアソシエーションを取り入れることができれば,より行動を起こしやすくなる。

・頭の中にイメージをもち,ビジュアル化する
・見た感じ,景色,色,におい,感触,など,具体的に
・自分自身がその映像のなかに溶け込んでいく

「その場で何が聞こえる?」「そこに何が見える?」「そこに誰が一緒にいる?「その先にどんな風景が開けている?」等々。

ディソシエーションの方法

何かをしていて,ふとした瞬間,醒めてしまい,その状況を遠く離れたところから見てしまう経験はないだろうか。これが,心と行動(身体)が分離した,ディソシエーションの状態。出来事を客観的に見てしまい,そこに入り込むことができなくなっている。こういう場合は,行動は抑制され,ゆとりが生まれ,冷静な次への判断をすることができる。

・自分を外から見るように質問をくりかえす

「それを見ているときの自分の気持ちは」「どんな表情をしている」「どんなことを聞いていて,どんなふうに感じている」 「10年後の自分から見たらどう見える」等々。

・点数化する

ふだん漠然と「やれていない,できていない」と思うことを「点数にしたら何点なんだろう」と問いかけてみると,行動を客観的に振返ることができ,ここまではできている,しかしここから先はできていないというのがはっきりと見えてくる。これもディソシエーションの一種。たとえば,理想の状態を十点満点として,現在何点なのか,その不足分をクリアするのに,何をしたらいいのか。点数化することは,進むべき道を目前に明確に提示してくれる可能性がある。少なくとも道の入り口くらいは見えるはずです。